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月刊 世界のチーズ Vol.3 RUTLAND RED(ラトランド・レッド)

●RUTLAND RED ラトランド・レッド
 (Aged Leicestershire Red:エイジド・レスターシャー・レッド
  /Red Leicester:レッド・レスター)
■ラトランド・レッド(RUTLAND RED)というチーズはイギリス レスターシャーにあるチーズメーカー ロング・クローソン・デアリー(Long Clawson Dairy)の商標であり、同社で作られる最高品質のレッド・レスターに付けられたものです。
レッド・レスターはサマセット州のチェダーチーズとよく似たタイプのイギリスチーズです。大量生産型のブロックタイプと伝統的な製法で作られたクラッシックタイプとがありますが、ラトランド・レッドは伝統的なクラッシックタイプで、赤みがかったオレンジ色の生地の上に粉を吹いた様なカビをまとっています。やや粘りのあるチェダーと比べて生地がもろく、通常6~12ヵ月の熟成状態で販売されます。生地はモイスチャーでクリーミーさもあり、ほのかな苦みに甘さの入り混じったナッツのような風味はしばしばキャラメルテイストと表現されています。
■原料乳:牛乳(殺菌乳)■熟成期間:6ヵ月
■大きさ・形:直径約28cm、高さ約6cmの平たい円筒形、重さ:約4kg
■原産地:イングランド、イースト・ミッドランズ、レスターシャー州

「伝統的製法が何か」ということについては明確な定義がありませんが(直方体のブロックではなく)円筒形であること、おおよそ6ヵ月以上の中長期熟成タイプであることなどが挙げられます。とりわけこのラトランド・レッドに関しては表面にバターを塗り、「モスリン」と呼ばれるクロス(生地)で表面が覆われているというきまりがあります。「モスリン」の役割はチーズが呼吸できるようにすることで熟成の間にしっかりとした表皮の形成を助けることと表面に生えたカビを内部まで入り込ませないことです。


▲ラトランド・レッドに使用されている「モスリン」は巾着袋のような形状をしており、口をしぼることでタイヤカバーのように表面を覆います。その表面には白~ブルーグレー、赤褐色、黄色の色とりどりのカビが粉を吹いたように生えています。ただしカビがチーズの内部に入り込んでいくことはなく、カビの生成する酵素が生地に含まれるたんぱく質やペプチドを分解することで複雑な風味を生み出します。

【 受賞歴 】
2013年の受賞以来、国内外で数多くの賞を獲得しています。
ザ・ブリティッシュ・チーズ・アワード、インターナショナル・チーズ・アワードをはじめ、「半径5マイル以内で生産された牛乳から作られた農家製チーズのコンテスト」等7つのコンテストで金賞を受賞。
また2017年インターナショナル・チーズ・アワードにおいて最優秀レッド・レスター・チーズとして、テスコ(※)レッド・レスター・トロフィーを受賞している。


1.テスコ(TESCO)は、イギリスに本拠を置き、小売業を主たる事業とする企業。5大世界流通大手の一つであり、イギリスのみならず北半球の十数カ国でハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどを展開している。売上高では、アズダ(ASDA)、セインズベリーを引き離してイギリス国内最大手である。


 


さらに2020年7月、世界的に恐怖と混乱をもたらしたCovid-19:コロナウイルスの影響によって数々の恒例行事が延期される中、イギリスのチーズメーカーと酪農家を支援する目的で初のヴァーチャル・チーズ・アワードが開催され、ベスト・ブリティッシュ・チーズ決勝にて、「ラトランド・レッド」が準優勝を獲得しています。
尚このアワードにおける全ての利益は、イギリスの農家と乳製品生産者の継続的な支援のため、スペシャリストチーズメーカー協会とRABI(王立農業慈善団体)に寄付されています。

RECOMMENDED

Rutland Red(ラトランド・レッド)を
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Long Clawson Dairy



1911年創業以来100年の伝統を誇るイギリスの老舗チーズメーカー。
クローソン・デアリーで最も有名なのは世界三大ブルーチーズのひとつにも数えられるブルー・スティルトンですが、現在はブルー・シュロップシャーやラトランド・レッドの作り手としても知られています。彼らは100%英国のチーズを作ることに誇りを持っており、100年間で培われた専門知識と革新的な技術を駆使して自分たちの製品をユニークなものにしています。

Thomas Hoe Stevenson


創設メンバーの1人であるトーマス・ホー・スティーブンソンは、メインの農家に隣接する部屋でスティルトンチーズを生産した2人の姉妹と一緒に、メルトン・モウブレイ(※)近くのマウント・プレザント・ファームを経営していました。 彼らのチーズが今後何世代にもわたってこの地で生産され続けられるようにするために、トーマス・ホーは地元の農家を訪問し乳製品の開発について意見を集めました。彼はやがて11の農家と契約し、ロング・クローソンの村にあった古い空きパブ「ロイヤルオーク」を共同購入しました。ロング・クローソン・デイリーの本社は現在もそこにあります。


2.メルトン・モウブレイ(Melton Mowbray)はレスターから19マイル(31キロ)北東、ノッティンガムから20マイル(32キロ)南東にあるイングランド、レスターシャーの町である。そこはその下流域でリバー・レイク(レイク川)に名前の変わるレスターシャーを流れるリバー・アイ(アイ川)に位置しています。地元の名物料理メルトン・モウブレイ・ポーク・パイで知られており、スティルトンチーズの製造を認可された6つのメーカーの1つの場所として知られています。


 

Rutland from Leicestershire

イングランドには世界的に有名なハードタイプチーズがいくつか存在します。
特に代表的なものとして北西部のランカシャー(Lancashire)、そこから少し南に下り同じく北西部のチェシャー(Cheshire)、そして南西部サマセット州のチェダー。いずれも生産地域や町の名前がそのままチーズの名前になっています。
冒頭でも触れた通り「ラトランド・レッド(Rutland Red)」という名称はロング・クローソン・デアリーで作られた最高品質のレッド・レスター(Red Leicester)に付けられた名前です。クローソンでは創設者のひとりであるトーマス・ホー・スティーブンソンに敬意を表し、彼の名をプレミアムブランドとして使用していることから、かつては「Thomas Hoe Stevenson’s Leicester Red(トーマス・ホー・スティーブンソンのレッド・レスター)」という名で売られていました。


ヨーロッパのチーズにはPDO(原産地呼称保護)という地理的表示の制度があり、その生産品の名前が知的財産権として保護されています。スティルトンもこのひとつですが、先に挙げたランカシャー、チェシャー、チェダー(※)そしてレッド・レスターのいずれもこの制度の保護を受けていません。これらはこうした制度のできる以前から広く名が知られていたことで世界のいたるところで作られ始めたことと、技術の進歩によって大量生産が可能となったことから伝統的製法とは異なる安価な大量生産品が作られるようになったことによって、その定義が難しくなったためです。
「ラトランド・レッド(Rutland Red)」という名前は伝統的製法で作られた最高品質のレッド・レスターをこうした安価な大量生産品と区別する為、新たなブランディングの確立を目的としてレスターシャーから独立したラトランドに因んで付けられました。


3.チェダー(Cheddar) についてのみ「ウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダー(West Country Farmhouse Cheddar)」の名称でPDO制度があるものの、流通しているチェダーのほとんどがこのPDOの認証を受けていない。

4.ラトランド (Rutland) とは、イングランドで最小のカウンティ(典礼カウンティ)でかつ単一自治体 (Unitary Authority)である。州庁所在地はオーカム(Oakham)。1974年にレスターシャーに併合されたが、1997年に一州として再び独立している。


 

Red Tractor Producer

ロング・クローソン・デアリーの農家は全てAFSのメンバーです。
AFS(Assured Food Standards:食品保証基準)とはイングランド、北アイルランド、ウェールズで食品の品質を振興および規制する組織です。数多くの食品、動物飼料、肥料のための農場保証制度としてレッドトラクターマークの発行承認を行っています。


レッドトラクターはイギリスで最大の食品保証制度であり、 食品の安全性とトレーサビリティについて責任を持って生産されていることを保証しています。レッドトラクターの基準は、アニマルウェルフェア(動物福祉)、食品安全、トレーサビリティ、環境保護を対象としています。


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