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月刊 世界のチーズ Vol.4 Queso de Murcia al Vino(ケソ・デ・ムルシア アル・ヴィーノ)

●Queso de Murcia al Vino ケソ・デ・ムルシア アル・ヴィーノ
■スペイン南東部のムルシア州で生まれた、この地域で特異な進化を遂げた山羊「ムルシアーノ=グラナディーナ種」のミルクから作られます。乳糖と質の良い乳脂肪のため、生地は真っ白で肌理が細かく、甘味のあるチーズに仕上がります。湿度70~90%の条件で熟成中、同じムルシア産の赤ワインで洗って仕上げます。反転、クリーニング、ワインへの漬け込みを繰り返すことで色づけられた表皮はガーネットがかった紫色となり、ヒケがなくスムーズで外側に膨らんだ曲線を描きます。マットホワイトの生地にはザラつきがなく均一、クリーミーで滑らか、しっかりと詰まっていて弾力があります。香りには山羊乳特有のにおいがありますが、それほど強くなくマイルド。赤ワインで染められた表皮からはセラーのような香りや花の香りを感じられます。フレッシュな山羊ミルクやクリーム、バターを連想させる味わいで強すぎず中程度。ほのかに塩味と酸味も感じられます。
■原料乳:山羊乳 ムルシアーノ=グラナディーナ種(殺菌乳)
■熟成期間:最低45日(ただし大きさが500g未満の場合は30日)
■大きさ・形:最大直径19cm、最大高さ10cmの側面がやや丸みを帯びた円筒形、
※直径:高さの比率(直径/高さ)=1.5~2.2、重さ:300g~2.6kg
■原産地:スペイン、ムルシア州

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GEOGRAPHICAL AREA

「ケソ・デ・ムルシア アル・ヴィーノ」はスペインのDOP制度(※1)によってその生産地域が厳密に指定されています。これによると原料である山羊乳の生産地域およびチーズの製造・熟成地域は、スペイン南東部に位置するムルシア県のすべての自治体で構成されています。


さらにこのチーズのDOP規定では、前述の項目に加えて熟成の際に使用されるワイン用ブドウの産地、ワインの製造地域に至るまで全てムルシア州内であることが指定されています。


1.デノミナシオン・デ・オリヘン(スペイン語: Denominación de origen、カタルーニャ語: Denominació d'origen、ガリシア語: Denominación de orixe、英語ではDesignation of Originの意味、略称DO)は、スペインの食料品に対して与えられる原産地呼称制度。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)


 

Murciano-Granadina

ケソ・デ・ムルシアの原料となるミルクはムルシアーノ=グラナディーナ種と呼ばれるスペインの乳牛ならぬ乳山羊から搾乳されます。ムルシア原産でマホガニー色のムルシアーナ種にグラナダ原産の黒色種グラナディーナをかけ合わせたハイブリッド種で1975年に生み出され血統台帳に正式に1つの種として登録されました。


ムルシアーノ=グラナディーナ種のヤギは、ムルシアの地でさらなる進化を遂げています。形態的な特徴としてより小柄で洗練された、しなやかな体躯に短い頭とピンと直立した耳を持っています。黒またはマホガニー色の短毛種で、乳房が驚異的に発達しています。ミルクの組成にはたんぱく質と脂質が豊富に含まれている為、他の山羊乳と比較してチーズ製造の歩留まりが非常に高く、また繁殖による性的不活性期がない為、一年を通して安定した搾乳が期待できます。


Vino tinto de las D.O. de Murcia


チーズの表面をワイン色に染めるのに使われるのは同じムルシア産のモナストレル主体の赤ワインです。モナストレルはスペイン原産の黒ブドウ品種で、スペイン以外では「ムールヴェードル」の名で南フランスでも多く栽培されている黒ブドウ品種です(現在スペインの中でも4番目に多く栽培されている黒ブドウ品種)。温暖で乾燥した気候と水はけの良い土壌を好み、晩熟で成長がゆっくり進むブドウ品種でよく熟すには強い日照が必要です。黒みを帯びた濃い色調が特徴で、ブラックベリー、カシス、ブラックチェリーといった黒い果実の中に、黒コショウ、タイム、オリーブ、ガーリックなどのスパイスやハーブ、肉、ジビエなどの動物的な香りが感じられ、野性的な印象があります。フミーリャ(Jumilla)、イェクラ(Yecla)、ブラス(Bullas)のDO認定赤ワインが使用されています。


History

山羊のミルクはムルシアの領主や農民にとって重要な収入源でした。19世紀末に人口が増加してくると、山羊乳製品の分化がムルシアやロルカの果樹園、カルタヘナの平野や高原のワイン産地のような主要都市周辺で盛んに始まりました。20世紀はじめの10年で人口と収益が増加したことことから、スペイン国内の北部で牛、南部では山羊乳に特化した消費の増大が起こりました。
ムルシアの山羊乳チーズ製造に関して、A.Panés著『ムルシアの山羊:搾乳と飼育およびその品種改良』(1922)にはフミーリャとイェクラで製造・消費されていたチーズが隣州バレンシアのアリカンテにも出荷されていたと記されています。このチーズは山羊乳に仔山羊のレンネットを加えて凝固させた後、ワインに漬け込んで熟成されたものです。できた生地は小さな型に詰められ加塩された後ワインに浸漬して滲み込ませます。
これを繰り返すことで卓越した特別な味わいを獲得し、広く市場に受け入れられていきました。


1920年代に山羊乳製品を安定的に製造するための産業革命がムルシアで起こります。この地では何年もの間、山岳地帯を中心に山羊飼い自身が手作りでチーズを生産していましたが、1990年代半ばまでに17のチーズ工場がこの地域の山羊乳製品の52%を製造するに至りました。この革命の主な推進力の1つは、1986年から農水環境評議会によって、純粋な山羊製アルティザンチーズの生産促進計画が実施されたことです。事実この改革によって自家農場で原料乳を生産するフェルミエ農家を多く生み出すこととなり、こうしたチーズ工場の増加は、チーズの大幅な品質向上に繋がりました。
1990年に農水産食品省は「ケソ・デ・ムルシア アル・ヴィーノ」を収録したスペインチーズのカタログを発表しており、「スペインベスト100チーズ」の地図にもこのチーズが掲載されています。

los Quesos de Murcia DOP

ムルシアチーズのDOP協会は正確には『「ケソ・デ・ムルシア」および「ケソ・デ・ムルシア・アル・ヴィーノ」に関する原産地統制呼称管理協会』というもので、名の通り「ケソ・デ・ムルシア」と「ケソ・デ・ムルシア・アル・ヴィーノ」2つのDOPを管理運営しています。さらに前者には「フレスコ」と「クラード」と呼ばれる2つのタイプが存在し、1つのDOPで2つのタイプが管理されています。



フレッシュタイプの「フレスコ」と熟成タイプの「クラード」といったところですが、「フレスコ」を熟成させて「クラード」になるわけではなく、それぞれ製法には多少の違いがあります。
基本的にはフレスコタイプの方が水分値が高くソフトな生地となるよう製法が指定されており、凝乳工程はフレスコタイプの方がやや高めの温度で凝固時間は短め。凝乳の加工(カット)工程はほぼ同じですが、クラードタイプではその後の離水撹拌をより多く行います。型詰め後のプレス工程はフレスコが最大2時間なのに対してクラードは1~4時間。塩水プールでの加塩工程はフレスコが10時間なのに対してクラードは20時間(この時間が長いほど生地からの排水が促され、表皮が固くなります)。最終的にフレスコは熟成させずにそのまま出荷されるのに対してクラードの場合、500gの小サイズでは60日、2.5kgほどの一般的なサイズだと120日間の熟成を経て出荷されます。
また外見上の特徴としてフレスコタイプのみ側面に網目状のグレービングが施されている為、一目で判別できます。
「アル・ビーノ」はワインで表面を洗う以外の工程がクラードと同じですが500gサイズで30日、大きなサイズでも熟成後45日で出荷されるところがクラードとの違いです。


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